名義預金は税務調査でばれる?調べられるポイントと注意点

名義預金が相続税の税務調査で確認されるポイントを示す通帳とチェックリスト 相続税の申告

親が亡くなる前に、親の口座から家族名義の口座へ預金を移していた場合、「これは相続財産に入れる必要があるのか」「税務調査で見つかるのか」と不安になる方は少なくありません。

結論からいうと、口座名義が子・孫・配偶者であっても、実質的に亡くなった人のお金と判断されると、名義預金として相続財産に含める必要があります。名義預金とは、口座の名義は家族でも、実際には被相続人、つまり亡くなった人が管理していた預金のことです。

この記事では、名義預金が相続税の税務調査でどのように見られるのか、調べられやすいポイント、申告前に確認すべき資料、税理士に相談した方がよいケースを整理します。読後には、自分の家庭の預金移動が申告漏れリスクになるかを大まかに判断できるようになります。

なお、名義預金の基本的な判断基準から確認したい方は、先にこちらの記事も参考になります。

名義預金とは?相続税で問題になる判断基準と対策

親の預金移動や家族名義の口座があり、相続税申告に含めるべきか迷う場合は、早めに専門家へ確認しておくと安心です。

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名義預金は税務調査で見つかる可能性がある

名義預金は、相続税の税務調査で問題になりやすい財産の一つです。理由は、預金の入出金履歴、通帳、印鑑、キャッシュカードの管理状況、贈与契約の有無などから、実際に誰のお金だったのかを確認しやすいからです。

国税庁は、相続税がかかる財産について、現金、預貯金、有価証券、土地、家屋など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるものを含むと説明しています。つまり、家族名義の口座であっても、実質的に亡くなった人の財産と判断されれば、相続税の課税対象になる可能性があります。

参考:国税庁 No.4105 相続税がかかる財産

特に注意したいのは、「口座名義が妻だから妻のもの」「子ども名義だから子どものもの」と単純には判断されない点です。相続税では、形式上の名義だけでなく、実際に誰が資金を出し、誰が管理し、誰が自由に使えたのかが重要になります。

名義預金として見られやすいケース

名義預金として問題になりやすいのは、家族名義の口座にお金が入っているものの、贈与が成立していたとは言い切れないケースです。贈与とは、あげる人と受け取る人の双方が「財産をあげる・もらう」と合意していることをいいます。

ケース見られやすいポイント注意点
親が子名義の口座に毎年入金していた子がその口座を管理していたか通帳や印鑑を親が持っていると名義預金と見られやすい
配偶者名義の定期預金にまとまった資金を移した資金の出どころが被相続人か生活費の範囲を超える大きな資金移動は説明が必要
孫名義の口座に教育費として預けていた実際に教育費として使われていたか使われずに残っていると財産移転と見られることがある
死亡直前に預金を引き出した引き出したお金の使途葬儀費用等に使った分と手元に残った分を分けて説明する
家族名義の口座で本人資金を運用していた投資判断や管理者が誰か名義だけ変えても実質が本人資金なら問題になりやすい

表のように、名義預金かどうかは「誰の名義か」だけでは決まりません。資金の出どころ、管理していた人、使える状態にあった人、贈与契約の有無などを総合して判断します。

税務調査ではどこまで調べられるのか

相続税の税務調査では、申告された財産だけでなく、申告漏れがないかを確認するために、預金の動きや家族名義の財産も確認されることがあります。税務調査とは、申告内容が正しいかどうかを税務署が確認する手続きです。

国税庁の令和5事務年度の資料では、相続税の実地調査件数は8,556件、申告漏れ等の非違件数は7,200件、非違割合は84.2%とされています。これは、調査対象になった場合には、何らかの申告漏れや計算誤りが見つかる割合が高いことを示しています。

参考:国税庁 令和5事務年度における相続税の調査等の状況

ただし、すべての相続税申告に対して税務調査が入るわけではありません。調査対象になりやすいのは、預金の動きが大きい、財産額と申告内容に不自然な差がある、過去の収入に比べて申告された財産が少ない、家族名義口座への資金移動がある、といったケースです。

確認されやすい資料見られる内容申告前の対応
被相続人の預金通帳死亡前の大きな引き出しや振込使途をメモし、領収書を保管する
家族名義の通帳被相続人からの入金履歴贈与契約や管理状況を確認する
定期預金の解約履歴満期解約後の資金移動先移動先口座と理由を整理する
印鑑・キャッシュカード誰が実際に管理していたか本人管理か家族管理かを説明できるようにする
贈与契約書贈与の合意があったか形式だけでなく実際の管理状況も確認する

死亡直前の預金移動は特に注意が必要

死亡直前に預金を引き出したり、定期預金を解約して家族名義の口座へ移したりした場合は、税務調査で確認されやすいポイントになります。

たとえば、父の死亡直前に、満期になった1,500万円の定期預金を解約し、妻名義の別銀行口座へ移したとします。この場合、口座名義は妻であっても、もともとの資金が父の預金であり、父の相続開始時点で妻が自由に使える贈与として成立していた説明ができなければ、父の相続財産として見られる可能性があります。

このケースで問題になるのは、単に「妻名義にしたかどうか」ではありません。次のような事情が確認されます。

  • 父が本当に妻へ贈与する意思を持っていたか
  • 妻がその贈与を受けることを認識していたか
  • 妻が通帳・印鑑・キャッシュカードを管理していたか
  • 移した後の資金を妻が自由に使える状態だったか
  • 相続税申告でその資金移動を説明しているか

死亡直前の資金移動は、「葬儀費用のため」「生活費のため」「口座凍結に備えるため」など、実務上やむを得ない理由で行われることもあります。しかし、引き出した金額が大きく、使途が不明なまま残っている場合は、相続財産への計上漏れとして問題になる可能性があります。

預金の評価は死亡日時点で考える

相続税では、原則として被相続人が亡くなった時点の財産を評価します。預貯金についても、死亡日時点の残高や、定期預金等の既経過利子を確認します。既経過利子とは、死亡日時点で解約したと仮定した場合に受け取れる利子のことです。

国税庁の財産評価基本通達では、預貯金の価額は課税時期における預入高を基礎に、定期預金等については既経過利子から源泉所得税相当額を控除した金額を加えるとされています。

参考:国税庁 財産評価基本通達 203 預貯金の評価

そのため、死亡直前に定期預金を解約して他の口座へ移した場合でも、「死亡日時点でどこにあったか」だけでなく、「その資金が誰に帰属していたか」を確認する必要があります。

相続財産全体の評価方法を確認したい場合は、こちらの記事も参考になります。

相続財産の評価方法をわかりやすく解説

名義預金が見つかった場合のリスク

名義預金が税務調査で見つかると、相続財産の申告漏れとして、追加の相続税が発生する可能性があります。さらに、過少申告加算税や延滞税がかかることもあります。過少申告加算税とは、本来より少ない税額で申告していた場合に課される加算税です。延滞税とは、納付が遅れた期間に応じて発生する利息のような税金です。

特に、財産を隠したと判断されるような場合には、重加算税が問題になることがあります。重加算税とは、仮装や隠蔽があったと判断された場合に課される重い加算税です。

国税庁の令和5事務年度の相続税調査資料では、実地調査における重加算税賦課件数は971件、重加算税賦課割合は13.5%とされています。すべての申告漏れが重加算税になるわけではありませんが、説明できない預金移動や意図的な除外と見られる処理は避けるべきです。

参考:国税庁 令和5事務年度における相続税の調査等の状況 PDF

名義預金を申告前に確認する手順

名義預金の不安がある場合は、申告前に家族名義の口座と資金移動を整理しておくことが大切です。後から調査で指摘されるよりも、申告前に確認しておく方が対応しやすくなります。

手順確認すること具体的な行動
1被相続人名義の口座を確認死亡前3年から5年程度の通帳や取引履歴を集める
2大きな引き出し・振込を確認100万円以上など大きな資金移動を一覧にする
3家族名義口座への入金を確認子・孫・配偶者名義の口座に移った資金を確認する
4贈与の証拠を確認贈与契約書、贈与税申告書、通帳管理者を確認する
5説明が難しいものを専門家へ相談税理士に資料を見せ、申告に含めるべきか相談する

ポイントは、「怪しいものを隠す」のではなく、「説明できる形に整理する」ことです。相続税申告では、正確な財産把握が重要です。特に不動産、預金、生命保険、名義預金がある場合は、自己判断で進めると申告漏れが起きやすくなります。

申告準備の流れを確認したい方は、こちらの記事も参考になります。

相続税申告を税理士に依頼する流れ|準備資料と相談前の手順

家族名義の預金、死亡直前の引き出し、定期預金の解約、過去の贈与がある場合は、申告前に税理士へ確認しておくと、後日の税務調査リスクを下げやすくなります。

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税理士に相談した方がよいケース

名義預金は、家族だけで判断するのが難しい論点です。特に、金額が大きい場合や、死亡直前の資金移動がある場合は、申告前に相続税に詳しい税理士へ相談した方が安全です。

相談した方がよいケース理由準備する資料
家族名義の口座に500万円以上ある相続財産への影響が大きい通帳、取引履歴、入金元の資料
死亡直前に大きな引き出しがある使途不明金として見られやすい領収書、葬儀費用明細、メモ
配偶者名義の定期預金に資金を移した贈与か名義預金か判断が必要定期預金の解約資料、移動先口座の履歴
子や孫名義の口座を親が管理していた贈与成立を説明しにくい通帳、印鑑、贈与契約書、贈与税申告書
すでに相続税申告期限が近い確認不足のまま申告すると修正リスクがある財産一覧、戸籍、残高証明書、固定資産税資料

相続税申告を自分で進めるか迷っている場合は、名義預金の有無が一つの判断材料になります。預金移動の説明が難しい場合は、税理士に依頼することで、財産調査、申告書作成、税務署対応まで見通しを立てやすくなります。

相続税申告は自分でできる?難しいケースと税理士に頼む判断基準

名義預金と判断されないために生前からできること

生前贈与を行う場合は、名義だけを変えるのではなく、贈与が実際に成立していることを説明できる状態にしておくことが重要です。生前贈与とは、生きている間に財産を他の人へ無償で渡すことです。

名義預金と判断されにくくするためには、次のような点を意識します。

  • 贈与契約書を作成する
  • 受け取った人が通帳・印鑑・キャッシュカードを管理する
  • 贈与を受けた人が自由に使える状態にする
  • 年間110万円を超える贈与は贈与税申告を検討する
  • 毎年同じ時期・同じ金額の機械的な移転だけにしない

ただし、贈与契約書があれば必ず名義預金にならない、というわけではありません。実際の資金管理が贈与者のままであれば、形式だけの贈与と見られる可能性があります。

また、契約書の作成については個別事情により内容が異なります。一般的な項目を参考にすることはできますが、実際に作成する場合は、税理士や行政書士などの専門家に確認することをおすすめします。

よくある質問

名義預金は必ず税務調査でばれますか?

必ず見つかるとは限りません。ただし、預金の入出金履歴、家族名義口座への振込、定期預金の解約履歴などから確認される可能性があります。金額が大きい場合や死亡直前の移動がある場合は、申告前に確認した方が安全です。

妻名義の預金でも夫の相続財産になりますか?

なる可能性があります。妻名義であっても、資金の出どころが夫で、夫が管理していた、または妻が自由に使える状態でなかった場合は、夫の名義預金として相続財産に含まれる可能性があります。

死亡直前に引き出したお金はすべて問題になりますか?

すべてが問題になるわけではありません。葬儀費用、医療費、生活費など実際に使ったことを説明できれば、必要な支出として整理できる場合があります。ただし、使途が不明なまま残っている金額は、相続財産として確認が必要です。

贈与契約書があれば名義預金になりませんか?

贈与契約書は重要な資料ですが、それだけで必ず安全とはいえません。受け取った人が通帳を管理していたか、自由に使えたか、贈与税申告が必要な場合に申告していたかなど、実態も確認されます。

名義預金が不安な場合、申告前と申告後のどちらに相談すべきですか?

できれば申告前に相談する方が望ましいです。申告前であれば、財産一覧への反映、説明資料の整理、申告内容の修正を行いやすいためです。申告後に気づいた場合でも、早めに税理士へ相談してください。

まとめ:名義預金は「口座名義」ではなく「実質」で判断される

名義預金は、相続税の税務調査で問題になりやすい論点です。口座名義が子・孫・配偶者であっても、実質的に亡くなった人のお金と判断されれば、相続財産に含める必要があります。

特に、死亡直前の定期預金解約、家族名義口座への大きな振込、親が管理していた子や孫名義の口座、使途不明の引き出しがある場合は注意が必要です。

相続税申告では、「見つからなければよい」と考えるのではなく、申告前に資料を整理し、説明できる状態にしておくことが重要です。名義預金の判断に迷う場合は、早めに相続税に詳しい税理士へ相談しましょう。

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関連して、相続税申告を税理士に依頼する流れや、名義預金の基本判断も確認しておくと安心です。