相続税の税務調査はいくら以上で来る?財産額だけでは決まらない判断要素

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相続税を申告した後、「財産が1億円を超えると税務調査が来るのか」「2億円以上なら調査されるのか」「一般家庭なら税務調査は来ないのでは」と不安になる方もいらっしゃいます。

結論からいうと、相続税の税務調査には「財産が○円以上なら必ず来る」という公表された一律の基準はありません。財産額だけでなく、申告内容と国税庁が把握する資料情報との違い、無申告、預金の動きなどを踏まえて調査対象が選ばれます。

そのため、「1億円以下だから大丈夫」「一般家庭だから調査されない」と財産額だけで判断するのは適切ではありません。一方で、相続税を申告した人全員に税務調査が行われるわけでもありません。

この記事では、相続税の税務調査に「いくら以上」という基準があるのか、一般家庭でも対象になるのか、税務署がどのような情報や資金移動を確認するのかを整理します。さらに、申告漏れが見つかった場合の過少申告加算税・無申告加算税・重加算税についても、現在の割合を分かりやすく説明します。

相続税の税務調査はいくら以上で来る?

「1億円以上」「2億円以上」など、財産額だけで税務調査の対象を決める公表基準はありません。

国税庁は、相続税の実地調査について、資料情報などから申告額が過少と想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告と想定される事案などを対象に実施すると説明しています。

したがって、「財産が2億円を超えたら必ず税務調査」「1億円以下なら税務調査は来ない」といった単純な線引きはできません。

相続税の税務調査が財産額だけでなく申告内容や預金の動きなどから判断されることを示す図
よくある考え方実際の考え方
1億円以上なら必ず税務調査金額だけで決まる公表基準はない
2億円以上なら必ず税務調査財産額だけでは判断できない
一般家庭なら来ない申告内容等によっては対象になり得る
申告しなければ分からない無申告事案も調査対象になる

税務調査が来る時期や、連絡を受けてからの流れを確認したい方は、次の記事で詳しく整理しています。

相続税の税務調査はいつ来る?対象になりやすいケースと対策

一般家庭でも相続税の税務調査は来る?

一般家庭であっても、申告内容に確認すべき点があれば税務調査の対象になる可能性があります。

「一般家庭」という言葉には明確な税務上の定義がありません。重要なのは家庭の呼び方ではなく、相続税の申告が必要な財産があり、その申告内容に確認すべき点があるかどうかです。

たとえば、被相続人本人の預金残高だけを申告していても、生前に家族名義の口座へ資金を移していた場合や、死亡前に多額の現金を引き出していた場合には、そのお金が相続開始時点で誰の財産だったのかを確認する必要があります。

そのため、「資産家ではないから大丈夫」と考えるよりも、申告した財産と過去の資金移動を説明できるかを確認する方が重要です。

税務調査の対象は何を見て決められる?

税務署がどの事案を調査するかについて、詳細な内部基準が公表されているわけではありません。ただし、国税庁の公表資料から、申告内容と保有している資料情報との整合性が重要であることが分かります。

KSKシステムで資料情報と申告データを管理している

国税庁には、国税総合管理(KSK)システムと呼ばれる基幹システムがあります。KSKは全国の国税局と税務署をネットワークで結び、地域や税目を越えて情報を一元的に管理するためのシステムです。

国税庁は、法定調書をはじめさまざまな機会に収集した資料情報と申告に関するデータをシステムで管理し、税務調査や行政指導に活用しています。

そのため、「家族の間で動かしたお金だから分からないだろう」「申告しなければ確認されないだろう」と考えるのではなく、相続財産や生前の資金移動について、申告内容と実際の経緯を説明できる状態にしておくことが重要です。

なお、KSKがあるからすべての財産や取引が自動的に把握されているという意味ではありません。申告内容と各種資料情報などを照合しながら、必要な確認や調査に活用される仕組みと考えましょう。

国税庁は、現在のKSKシステムから、データ中心の事務処理を行う次世代システム「KSK2」へ2026年9月に移行する予定としています。

確認ポイント確認される内容注意したい例
申告内容と資料情報申告した財産と把握されている情報が合っているか所得・財産状況に比べて申告財産が不自然に少ない
預金の動き生前の入出金や資金移動死亡前の大きな引出しや家族口座への移動
家族名義財産実質的な所有者は誰か名義預金・家族名義の有価証券など
無申告本来相続税申告が必要ではなかったか財産を過少に見積もって申告しなかった
海外資産海外金融口座や国外財産など海外預金・海外証券等の申告漏れ

この表で複数の項目に当てはまり、自分で申告内容を説明できない場合は、税務署から連絡が来る前に一度申告内容を確認する価値があります。

相続税に対応する税理士であれば、相続税申告書と通帳・取引履歴・贈与関係資料などを確認し、申告漏れがないか、説明資料を追加した方がよい点がないかを整理できます。

相続税申告を依頼できる税理士を探す場合は、税理士紹介サービスのひとつである、税理士ドットコムで地域や依頼内容などの希望条件を伝え、条件に合う税理士の紹介を受ける方法があります。

相続税の税務調査はどのくらい行われている?

国税庁が公表した令和6事務年度の相続税の実地調査では、9,512件の調査が行われ、そのうち7,826件で申告漏れ等の非違が確認されています。

項目令和6事務年度
実地調査件数9,512件
申告漏れ等の非違件数7,826件
非違割合82.3%
追徴税額合計824億円
実地調査1件当たり追徴税額867万円

ここで注意したいのは、82.3%という数字は「相続税申告をした人の82.3%に申告漏れがある」という意味ではないことです。実地調査の対象として選ばれた9,512件のうち、申告漏れや計算誤りなどが確認された割合です。

また、税務署による確認は実地調査だけではありません。文書、電話、来署依頼などによる「簡易な接触」も行われており、令和6事務年度は21,969件でした。

税務調査で確認されやすい財産・資金移動

相続税では、被相続人名義で残っている財産だけを確認すればよいとは限りません。生前の資金移動や家族名義の財産についても、実質的な所有者が誰だったのかを確認する必要があります。

預金通帳は実務上「過去10年分」が一つの目安

相続税の税務調査に備えて預金の動きを確認する場合、実務上は被相続人の過去10年分の取引履歴を一つの目安として考えるとよいでしょう。

税務調査官は亡くなった方の過去10年分の預金通帳を主に確認し、多額の現金引出しや家族への資金移動などを調べるとされています。

ただし、「税務署が確認できるのは必ず10年間だけ」という法律上の一律ルールではありません。10年以上前の通帳や資料が残っている場合など、事実関係を確認するためにさらに過去の資料が問題になることもあります。

したがって、「10年以上前なら分からない」と考えるのではなく、まず過去10年程度の預金取引を時系列で確認し、説明できない大きな引出しや家族への送金がないかを整理することが現実的な対策です。

  • 死亡前に多額の預金を引き出している
  • 子や孫など家族名義の預金がある
  • 生前贈与として処理した資金がある
  • 生命保険・有価証券などの申告漏れが疑われる
  • 海外に預金・証券等を保有している

特に名義預金について、税務調査でどのような点が確認されるのか知りたい方は、次の記事をご覧ください。

名義預金は税務調査でばれる?調べられるポイントと申告前の対策

申告漏れが見つかったらどうなる?

税務調査などによって相続税の申告漏れが見つかると、不足していた相続税本税に加えて、状況に応じて加算税や延滞税がかかる場合があります。

ここで名称を正確に整理すると、主に「過少申告加算税」「無申告加算税」「重加算税」があります。

過少申告加算税|申告した税額が少なかった場合

期限内に相続税申告をしていたものの、申告漏れなどによって本来納めるべき税額より少なく申告していた場合に、過少申告加算税が課されることがあります。

修正する時期基本的な割合
税務調査の事前通知前に自主的に修正原則0%
事前通知後・調査による更正を予知する前5%(一定の超過部分は10%)
調査後など、更正を予知した後10%(一定の超過部分は15%)

つまり、申告後に自分で間違いへ気づいた場合は、税務署から調査の事前通知を受ける前に確認し、必要であれば早めに修正申告することが重要です。

無申告加算税|申告が必要なのに申告していなかった場合

相続税申告が必要だったにもかかわらず期限までに申告していなかった場合は、無申告加算税が課されることがあります。

期限後申告の時期基本的な割合
調査の事前通知前に自主的に申告5%
事前通知後・決定を予知する前50万円まで10%
50万円超300万円まで15%
300万円超25%
調査後など、決定を予知した後50万円まで15%
50万円超300万円まで20%
300万円超30%

上記の300万円を境とする割合は、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについて適用される現在の仕組みです。

重加算税|財産を隠したり事実を仮装した場合

重加算税は、単なる計算ミスや判断の誤りだけで課されるものではありません。課税の基礎となる事実を隠したり、事実と異なる状態を作るなど、隠蔽・仮装があった場合に問題となります。

状況基本的な割合
申告はしていたが、隠蔽・仮装により税額を少なく申告した35%
隠蔽・仮装に基づいて申告しなかった40%

したがって、「申告漏れが見つかった=必ず重加算税40%」ではありません。重加算税が適用されるかどうかは、財産を隠したり事実を仮装したと認められる事情があるかによって変わります。

加算税とは別に延滞税がかかる場合もある

不足していた相続税の納付が法定納期限より遅れると、加算税とは別に延滞税がかかる場合があります。

令和8年(2026年)の延滞税の割合は、原則として納期限の翌日から2か月を経過する日までは年2.8%、それ以後は年9.1%です。実際の計算期間や適用割合は個別の納付状況によって確認します。

税務調査の前に申告内容を確認した方がよいケース

財産額がいくらかだけではなく、次のような状況がないかを確認しましょう。

  • 相続税申告を自分で行い、計上した財産に不安がある
  • 親の死亡前に大きな預金の引出しや振込みがある
  • 子・孫など家族名義の預金や有価証券がある
  • 生前贈与について資料が十分に残っていない
  • 申告後に新たな財産が見つかった
  • 相続税申告をしていないが、本当に申告不要だったか不安がある

このようなケースでは、「税務調査が来るか」を予想するより、現在の申告内容が正しいかを先に確認する方が重要です。

税理士へ確認した方がよいケース

通帳や取引履歴を確認しても、相続財産に含めるべきか、自分で判断できない財産がある場合は、相続税に対応する税理士へ確認する方法があります。

相続税申告が得意な税理士であれば、申告書、預金取引、名義財産、生前贈与、不動産評価などを確認し、修正申告が必要か、税務署から質問された場合にどの資料で説明できるかを整理できます。

税理士へ相談するときの流れや、事前に用意する資料を確認したい方は、次の記事をご覧ください。

相続税申告を税理士に依頼する流れ|準備資料と相談前の手順

相続税申告や申告内容の確認を依頼できる税理士を探す場合は、税理士ドットコムで希望する地域や依頼内容を伝え、条件に合う税理士の紹介を受ける方法があります。
利用者側の紹介料は無料で、紹介された税理士が希望に合わなければ断ることもできます。

相続税の税務調査についてよくある質問

財産が1億円以下なら税務調査は来ませんか?

1億円以下なら税務調査をしないという公表基準はありません。財産額だけでなく、申告内容と資料情報との整合性などによって確認されます。

財産が2億円を超えると必ず税務調査が来ますか?

必ず来るとはいえません。2億円以上を一律の税務調査基準とする国税庁の公表基準はありません。

一般家庭でも相続税の税務調査はありますか?

あります。一般家庭か資産家かという呼び方ではなく、申告内容や資金移動などに確認すべき点があるかによって調査対象になる可能性があります。

税務調査に入られたら必ず追徴課税されますか?

必ずではありません。ただし、令和6事務年度の実地調査では、調査対象となった9,512件のうち7,826件で申告漏れ等の非違が確認されました。

税務署は何年前まで通帳を調べますか?

実務上は、まず過去10年分の預金取引を一つの目安として考えるとよいでしょう。相続税実務に詳しい税理士の解説でも、調査官が亡くなった方の過去10年分の預金通帳を主に確認するとされています。

ただし、税務署が確認できる期間を法律で一律10年間に限定しているわけではありません。10年以上前の通帳や資料が残っている場合などは、それ以前の取引が確認されることもあります。そのため、「10年を過ぎれば分からない」とは考えず、少なくとも過去10年程度の大きな入出金や家族への資金移動を整理しておきましょう。

申告後に財産の漏れへ気づいたらどうすればよいですか?

自己判断で放置せず、相続税額への影響を確認してください。修正申告が必要な場合、税務調査の事前通知前に自主的に修正するかどうかで過少申告加算税の取扱いが変わる場合があります。

まとめ|税務調査は「いくら以上」より申告内容を確認する

相続税の税務調査について、「1億円以上」「2億円以上」といった財産額だけで対象を判断することはできません。

  • 税務調査には「財産○円以上」という公表された一律基準はない
  • KSKなどを通じて管理される資料情報や申告データも税務調査等に活用される
  • 一般家庭でも申告内容に確認すべき点があれば対象になり得る
  • 預金取引は実務上、過去10年程度を一つの目安として確認する
  • 令和6事務年度の実地調査の非違割合は82.3%
  • 申告漏れでは過少申告加算税・無申告加算税などが生じる場合がある
  • 隠蔽・仮装がある場合は重加算税35%または40%が問題になる

大切なのは、「自分はいくら持っているから調査される」と考えることではなく、申告した財産と実際の財産・資金移動を説明できる状態にしておくことです。

申告内容に不安がある場合は、税務署から連絡が来るまで放置せず、通帳や取引履歴などを整理して早めに確認しましょう。

情報確認日:2026年8月17日